米財務省、PFE(禁止された外国事業体)規制の指針を発表

Photo: The White House

クリーンエネルギー税制に新たな制限

米国財務省と内国歳入庁(IRS)は、2025年に制定された「OBBBA(One, Big, Beautiful Bill Act)」に基づき、クリーンエネルギー関連の税額控除を制限する新たな指針「Notice 2026-15」を発表した。この指針は、国家安全保障上のリスクがあると見なされる「禁止された外国事業体(PFE)」からの実質的な支援を受けたプロジェクトに対し、税制優遇を制限することを目的としている。対象となるのは、クリーン電気生産税額控除(§45Y)、クリーン電気投資税額控除(§48E)、および先進製造生産税額控除(§45X)。具体的には、2025年12月31日より後に建設が開始される施設や、2025年7月4日以降に販売される部品に適用され、サプライチェーンにおけるPFEの排除が厳格に求められる。

判定の鍵を握る「MACR」:実質的支援コスト比率の導入

税額控除の可否を判定する指標として、「実質的支援コスト比率(MACR:Material Assistance Cost Ratio)」が導入された。これは、製品や施設の総直接コストのうち、PFEに起因しないコストが占める割合をパーセンテージで算出したものだ。例えば、2026年に建設を開始する蓄電池設備(EST)の場合、このMACRが55%を下回ると「PFEからの実質的な支援があった」と見なされ、税額控除の対象外となる。納税者は、施設に組み込まれた製造製品(MP)やその構成部品(MPC)ごとに、PFEによって採掘、製造、または生産されたものであるかを追跡し、計算を行う必要がある。このMACRの導入により、企業は部品調達の透明性を極めて高いレベルで維持することが義務付けられる。

厳格化される「禁止された外国事業体(PFE)」の定義と監視

本指針において、PFEは「特定外国事業体」と「外国影響事業体」の2つのカテゴリーで定義される。特定外国事業体には、中国の軍事関連企業やウイグル強制労働防止法に関連するリストに含まれる企業などが該当する。一方、外国影響事業体は、特定外国事業体が25%以上の株式を保有している場合や、契約を通じて技術や生産のタイミングを決定できる「効果的な制御」を行っている場合を指す。特に、2025年7月4日以降に締結または修正された知的財産ライセンス契約を通じて、PFEが生産活動に介入している場合は厳しく制限される。財務省は、一時的な所有権の変更などによる規制逃れを防ぐため、非常に広範かつ詳細な監視体制を敷く方針を示している。

納税者の事務負担を軽減する「セーフハーバー」規定

複雑なコスト計算やサプライチェーンの追跡を簡素化するため、本指針は3つの暫定的な「セーフハーバー(救済規定)」を提供している。第一に、既存の国内コンテンツ要件の表を使用して部品を特定できる「特定セーフハーバー」。第二に、実際のコストを個別に追跡する代わりに、あらかじめ設定された割り当て比率を使用してMACRを算出できる「コスト比率セーフハーバー」。そして第三に、サプライヤーが発行した証明書(PFE製ではない、あるいは非PFEコストの総額を示すもの)を信頼して判定に使用できる「証明セーフハーバー」だ。ただし、納税者が証明書の誤りを知っている、あるいは知るべき理由がある場合には、これらの救済規定を適用することはできない。

強化された罰則と今後の展望:コンプライアンスの重要性

PFE規制に関連する申告誤りに対しては、通常よりも厳しい罰則が適用される。通常、税額の過少申告が10%を超えた場合に科されるペナルティが、本件に関してはわずか1%の過少申告でも適用されるよう変更された。また、PFE判定の誤りに基づく不足税額については、通常の時効を延長し、申告から6年間は追徴が可能となる。さらに、虚偽や不正確な証明書を提供したサプライヤーに対しても、1万ドルまたは不足税額の10%のいずれか大きい方の罰金が科される可能性がある。財務省とIRSは今後、より包括的な規則を提案する予定であり、クリーンエネルギー分野に携わる企業は、2026年3月30日までに提出されるパブリックコメントの内容を注視しつつ、コンプライアンス体制を再構築することが急務となっている。

https://www.irs.gov/pub/irs-drop/n-26-15.pdf
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